大小学生 2000年9月18日
 最近の小学生はやけにでかい。
 食べているものがそんなに違うわけでもないのに、僕らが小学生の頃よりもはるかにでかくなった(ような)。

 先日、朝の電車で見かけた小学生の話。

 彼は港南台あたりからサラリーマンにまぎれて電車に乗ってきた。Tシャツに半ズボン、プクプクでツルツルの手足と顔、まだやわらかそうな髪と尻。ランドセルこそしょっていなかったが、どう見ても小学生と言える風体である。
 が、どうも不自然だ。
 手前にいるサラリーマンと同じくらいの大きさに見える。
 「ついに遠近法の時代も終わったか?」と思いながらよくよく見てみても、たしかに彼はそのサラリーマンの後ろに立っている。そしてその向こう側にも同じくらいのサラリーマンが。
 それはまぎれもなく、すくすくと成長しすぎた大小学生であった。
 と言っても身長は172、3センチくらいなのだが、僕が6年生のとき130センチだったことを考えれば、それはもうコブが山を見上げるようなものだ。また、彼は身長が高い低いうんぬんではなく、全体的にビッグなのだ。
 「成長した」というより、「ふくらました」といったほうがわかりやすいだろうか。

 彼は電車に乗り込むと、かばんからマガジンを取り出し、手すりにもたれて読み始めた。子供さながらに、顔の間近にマガジンを構え、時折親指で鼻をグリグリ。う〜ん、ぜんぜんかわいくない。
 しばらくはそうやっておとなしくマンガを読んでいたのだが、電車が次の駅につき、座っていた乗客が立ちあがったそのとき、彼はひとつの行動を起こした。
 彼は読んでいたマガジンをバッ閉じると、その空いた席めがけてダダッと駆け出したのだ。
 しかし残念なことに、その空いた席はその前に立っていた人にスコッと座られてしまい、彼はがっかりしてもとの手すりに戻り、またマガジンを開いて読み始めた。
 そして電車がまた次の駅につくと、彼は同じように空いた席めがけて突進する。しかしまたしても惨敗。と、思ったら今度は違うところが空く。また突進。そして連敗。
 彼は電車が駅で止まるたびにその行動を繰り返すのだが、何しろ図体がでかいもんだから、目立ってしょうがない。うら若き小学生が空いた席に座りたい気持ちは痛いほどわかるが、半ズポンはいた大人のような男の子が満員電車でドタバタ走り回る光景は何とも異様である。
 結局、洋光台から関内まで7回も神に見放された少年は、僕と一緒に桜木町で降りると、野毛山動物園のほうにのっしのっしと消えていった。

 大きな小学生の子供じみた行動を目の当たりにし、いくら小さいからといって間違ってもそんなことはしないだろう自分を省みて、「あー僕も大人になったんだナー」って思う。
 三輪和生、27度目の夏。
かずお