夏の男 2000年8月7日
 もともと色白の僕は、日焼けした肌にあこがれる。
 今年も夏休みを利用して、毎年恒例のルーフタンニングを敢行した。
 これは僕が社会人になった初めての夏休みに発明した日焼けテクニックだ。

 ルーフタンニングで利用される日焼けスポットは、わが実家のサンルームの屋根の上。
 ここは庭中がおやじとおふくろのガーデニングの餌食となった我が家で唯一、日当たりのよい屋外で、ちょうど僕の部屋のベランダからダイレクトにアクセスでき、出不精な僕にはまさにうってつけの場所なのだ。
 そして持ち込まれる日焼けアイテムは、日焼けローション・水着(パンツでも可)・タオル・歩刈り
(「ポカリ」って入れたらこんな変換しやがった。おもしろいのでこのままで。)スウェット・ウォークマン・マンガ・すだれ・銀色のシートなどなど。
 まず日焼けローションと水着は解説の必要もあるまい。
 タオルとポカリスウェットは、小さいころ浅間山に家族旅行に行ったとき熱射病で死にかけた僕には必須。いくらあこがれるからといって、命がけで日焼けをしてはいけない。タオルで頭をくるみ、ポカリでまめに水分を補給すべし。
 ウォークマンとマンガは、退屈な時間をまぎらすためのものだが、それぞれ使うタイミングが違う。まずマンガは裏を焼くときに使う。表を焼くときに読んでいたら顔が影になって焼けないからだ。だから表を焼くときはマンガを読まずに音楽を聴く。歌を作るくせに歌をあまり聴かない僕は、もっぱら自分の歌ばっかり聴いている。自己陶酔もはなはだしい。
 さて次にすだれだが、これはアルミの骨と透明の樹脂でできたやわなサンルームに乗っかるための補強に使う。約50センチ間隔で並ぶアルミ骨の上にすだれの竹が交差するようにしきつめる。こうすれば透明の樹脂の部分に乗っかっても突き抜けてサンルームへ墜落する心配はない。
 さらにその上に敷く、日焼け促進用銀色シートだが、これはさらなる補強と居住性を兼ね備えた、よく山登りに行く人がリュックサックにしばりつけてる、裏が青くてフワフワしてるやつ(何て言うんだ?…シルバーシート?)を使う。
 この見事なコンビネーションは、僕がホームセンターを2時間歩き回った末に見出したもので、3年目を迎えた今でもその存在をおびやかすものはない。
 あとはパワフルな日差しとお隣さんの白い目をものともしない強い心を兼ね備えればできあがりだ。

 さて、夏休みの最初2日をライブに費やし、残り7日間はフルに日焼けにいそしむぞ、と意気込んでいたのだが、3日目にして早くも肌が真っ赤になり、かゆみと痛みにさいなまれ始める。
 4日目もがんばって2時間がまんしたものの、さすがに5日目以降は肉体の限界を感じ、僕を呼んでいる太陽に背を向けて、痛んだ体の治療に専念するはめになってしまった。
 それでも家の屋根にしちゃ充分すぎるほど黒くなった僕は、夏休み明けに会社のみんなの「焼けたねー!」の感嘆の声に、あふれる幸せをかみしめたのだった。

 が、そんな幸せな時もつかの間、1週間後にはうそのように色が冷め、今では会社のみんなの「落ちたねー!」の冷やかしの声に、熱しにくく冷めやすい自分への失望を隠し切れない日々を送っている。
 そうさ、どうせ僕には色白がお似合いなんだ。ふっ、バカな夢を見ちまったもんだ・・・。

 そんな中、人知れずいまだ小麦色をキープしているおなかがとてもいじらしい。

かずお